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第五章「気と潜在能力」3

4: 乳幼児の早期教育

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素読文化が支えた近代日本

 我が国は、平安時代から江戸時代にかけて、優れた教育思想を育くんできた。寺子屋の制度で庶民の教育を促し、武家は幼児期から、論語や四書五経の素読をすることで、優秀な人材を輩出してきた。そして幕末の外圧に耐え、歴史に残る改革を支えたのは、素読文化により能力を開化させた人々であった。

 その明治維新の元勲が次々に亡くなった昭和初期から、明治以降の新しい教育を受けた者が体制を占め、日本の迷走が始まった。敗戦後も正しい舵取りができず、政治家・官僚・経済人の混迷は、今ここに極まれる様相を呈し憚る事を知らない。

 またユダヤ民族に優れた人材が多いのは、ノーベル賞受賞者が多い事でも伺える。これはユダヤ人の家庭では、ユダヤ教の聖典を幼い頃から暗証朗読させて、育てるという事に由来すると考えられる。

 つまり素読の持つ効用とは、幼児期に存在する、脳の臨界期を有効に活用して、右脳を開くシステムなのである。


才能逓減の法則

脳の臨界期

 幼児期の素読や能力開発が、なぜ優秀な頭脳を創るのだろうか。人間の脳の成長は早く、五歳から六歳で完成されるという。その神経細胞(ニューロン)は約百四十億有り、ニューロン同士のネットワークを形成するのがシナプスである。

 そのシナプスとは神経細胞から軸索を伸ばし、他の神経細胞へ情報を伝える為の機能を持つのだが、このシナプスは生後すぐから数を増やし続け、八ヶ月で六兆になんなんとする数に達するという。

 その後は少しずつ減少してゆき、六歳を過ぎて急激に数を減らすことが判明している。この脳のネットワークが最高の状態で維持されるのが、生後すぐから三歳をピークに六歳迄という事になる。

 この期間に与えられる情報の質と量により、神経細胞のネットワークが決定づけられ、その後の能力の差となって現れる。利用されないシナプスは次から次と消滅して、「才能低減の法則」が働く。使われない筋肉が細くなっていくのと同じことだ。この時期を「脳の臨界期」と言う。

 つまり、生まれた直後の赤ちゃんは、この世で生きて行く為のすべてを、貪欲に吸収していかねばならない。すべての感覚をを総動員し、あらゆる情報を取り入れようとする。そうして人間としての知性の基本が形成され、各々の個性を創出する事になる。

 この大切な脳の臨界期に、幼児への虐待が繰り返されたら、どんな人間に育つのかは想像に難くない。親殺し、子殺しをいとも簡単に行ってしまう知性の破壊である。

 この様な極端な例でなくとも、愛されていないという、疎外感を感じながら育つ例など日常的に散見される。また愛の表現が間違って、暴力に向かう事もあろう。

 私は以前に新幹線で隣り合わせた、若い母親と三歳くらいの双子の姿を忘れることができない。この親子の醸し出す雰囲気は、実に穏やかで信頼と敬愛に満ちていた、素敵な親子の姿であった。

 それは育ちの良さからくるものなのか、母親の深い愛、故なのかは判らないがその両方であろう。この様な、深い愛に満たされてこそ、人としての知性を育む基礎が育つのだろう。

 私の拙い表現力では、伝えきれないのが残念だが、エデンの園や天国があるのならば、あのような波動に満ちた世界なのかもしれない。

神経細胞を結ぶ、ネットワークの構築

 臨界気に様々な情報刺激を通して、神経細胞のネットワークを強化してシナプスを出来るだけ残す作業が必要となる。それは運動刺激や視聴覚刺激などの五感による、様々な刺激によって脳が高度な機能を獲得し、その情報を出力することによって完成する。

 臨界期の動物実験で、生まれた直後の鼠になんの刺激も与えずに育てたり、或いは猫の視覚を遮断して育てると、運動機能が未発達であったり、視覚を失ったりと、様々な機能障害が引き起こされることが知られている。

 つまり、先に脳の機能障害があるのではなく、情報不足による才能低減が生じ、機能障害が起きるのである。臨界期以降に刺激を与えても、その発達は著しく阻害される事になる。
 脳血管障害による、後遺症のリハビリが困難を極めるのはご存知の通りである。

 先天的な障害も、もちろん存在するだろうが、それとて食による悪影響であったり、夫婦の不和が原因である事も見過ごせないだろう。更には望まれない妊娠が、影響を及ぼすこともある。

 親の心理を敏感に感じ取り、胎児が心を閉ざしてしまう事で生じる、障害も否定できない。
親の心は胎内にいる頃から、三歳頃までは完全に子供に見透かされていると思って、間違いないのではないか。子供が懐かないからといって、虐待するのは本末転倒と言わざるを得ない。

 子供は完全な人格を備えた存在である。唯、知識と経験が足りていないだけである事を、子育てを経験したことがある人ならば、誰しもが感じているはずである。

 現代の日本人はこの様な経験知による、古き良き子育て文化を、お座なりにしてきたが、最新の脳生理学による、知見と伝統を取り入れ、愛に裏打ちされた、幼児教育システムの完成を目指さねばならない。それは新しい次代を担う人材の養成でもある。


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