人間の「食性」に適った食行動によって得られる、健康効果を解説。この「食性」から逸脱した食習慣は生活習慣病の温床であり、QOLの悪化を招くことを身体で理解する事が重要である。

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第三章「生命維持システム」

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生存の原理

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第三章「生命維持システム」

5:1 免疫機能【阿保 徹】

 現代生理学的な解釈では、過剰なストレスにより免疫力が、低下して病気を誘発していると云われている。その詳細は以下のとおりである。

人体の防御系は自律神経の支配を受ける

自律神経白血球正常働き顆粒球・リンパ球の増減
交感神経顆粒球60%病原体の貪食細胞7割以上の顆粒球増加/アレルギー体質
副交感神経リンパ球35%異常蛋白の接着分子3割以上のリンパ球増加で癌は退縮
マクロファージ5%病原体細胞残骸処理 

交感神経緊張状態~ストレス過剰

  • 顆粒球の増加、活性(顆粒球は炎症性の防御系を形成し、免疫は起こさない)
    • アドレナリン、ドーパミンなど分泌 ⇒ 各臓器の運動刺激
    • 活性酸素を放出 ⇒ 細菌、異常細胞の処理
  • リンパ球減少
    • 免疫力低下
  • 危急時の防衛反応
    • アドレナリン大量分泌血圧上昇、心拍数増加、糖の増加、気管支拡張、赤血球増加、胃腸機能(消化液、蠕動運動など)の抑制
    • コーチゾルの分泌 ⇒ リンパ球の溶解 ⇒ 免疫力低下で免疫障害が多発

交感神経緊張状態が継続されれば、顆粒球増多となり、大量に放出される活性酸素により組織障害を引き起こす。同時にリンパ球の減少で免疫障害、免疫異常が生じる

副交感神経優位の状態~ストレスの軽減

  • 安静にし、リラックスして、気分が安定した状態で、リンパ球が活性化。
  • 消耗した生体機能の回復に適した条件を整える働きをする。
    • 血圧の低下、心拍数の減少
    • ストレス刺激の解消
  • リンパ球増加
    • 免疫機能の亢進
    • 顆粒球減少

副交感神経優位の状態は、心身を休め疲労を取り除く役目を持っている。しかし、食の誤りにより生体機能は本来の機能を発揮できず、心身の疲労回復ができない状況を生み出し、鬱や慢性病の原因となる(赤の下線部分は管理人の私見 詳細はこちら

新旧2系統の免疫系

  • 副交感神経支配胸腺による新免疫系
    • 顆粒球が処理出来ない、微細な外来抗原や異常蛋白に対応
  • 交感神経支配消化管、肝臓、子宮、外分泌腺の周りに存在する古い免疫系
    • 交感神経緊張状態で活性化 ~ 顆粒球とともに自己の異常細胞の処理

引用:安保 徹(あぼ とおる) 著 / 免疫革命 / 講談社


交感神経緊張状態の意味

 ストレス過剰による交感神経優位の状態とは、まさに人類が永いあいだ、苦しんできた
飢餓ストレスに対応して、進化させてきた防御反応である。顆粒球を増加させる為に、リンパ球の溶解を促して、免疫系の抑制を計り、飢餓に耐え得る体の準備を整える。

 この防御システムは、食が絶たれるという命の危機に際し、逆に体内では旺盛な生命力が発現する。蓄えた脂肪を燃やし、炎症や組織異常が修復され、旺盛な生命力が活性する故に、免疫系の抑制も問題にならないものと思われる。

 断食による健康回復、増進の効果は、この生体反応を利用したもので確かな結果を残している。「腹七,腹八分に医者いらず」という教えは先人の至言である。但し本格的な断食療法は、専門家の指導を仰ぐことをお薦めする。

  • 交感神経緊張飢餓ストレスを意図的に創出
    • 顆粒球増多(白血球の60%が理想的~70-80%で組織障害)
      • 炎症した組織の修復・除去
      • 活性酸素の放出
      • 病原菌の貪食作用
      • リンパ球が処理した微細物質の処理
    • 副腎髄質を刺激
      • アドレナリンの分泌促進(生物の生存本能を司る物質)
      • 各臓器の運動刺激

※このような作用により、肉体は活動的となり、適度なストレスは体を修復して、人生をより豊かにしてくれる。

副交感神経緊張過剰の意味

 しかし厄介なことに現代社会では、継続的に曝されるストレス解消法としての
摂食行動によって、ストレスを取り除くこと無く、副交感神経優位の状態に導くことができる為に、自然と過食傾向が強くなり、益々副交感神経が亢進されリンパ球増多となる

 また化学物質、肥満、白砂糖などの影響で体内の酸素が奪われ、副交感神経の緊張が作られて、さらなるリンパ球増多となることで、抗体が抗原に対して過剰反応して、アレルギー疾患の原因となる。

  • 副交感神経緊張
    • リンパ球増多(白血球の35%が理想的~30%未満で免疫障害)
      • 顆粒球が処理不能な微細物質の処理
      • ウィルス-リケッチア-プリオン-など異常蛋白の処理
      • 心拍数の減少-血圧の低下
      • 安心したリラックス状態で活性化-健康促進
      • 食欲増進
  • 副交感神経緊張過剰
    • リンパ球異常活性-増加
      • アレルギー疾患(アトピ-鼻炎-気管支喘息など生活習慣病
      • 疲労-全身倦怠感
      • 片頭痛-眠気-低血圧症  
    • 神経伝達物質の分泌促進
      • プロスタグランジン ~ 血管拡張-痛み-発熱
      • アセチルコリン ~ 心臓抑制-血圧降下-腸管収縮-骨格筋肉収縮
      • ロイコトリエン ~ 浮腫(むくみ)-喘息-過敏症
      • セロトニン ~ 腸の蠕動運動-毛細血管-収縮透過性亢進
      • ヒスタミン ~ 血管拡張-腸管-子宮筋収縮-アレルギー起因-毛細血管透過性亢進



 過度な緊張が続くと、体は疲弊しストレスに対応したシステムが働かなくなる。
特に副腎皮質ホルモンが枯渇して、恒常性維持機能や防御システムに、重大な齟齬をきたし、生命維持にも関わる。

  • 副腎皮質ホルモン

副腎皮質から分泌されるホルモンの総称。生命維持に必須で、体内における無機質-水分代謝の調節を行うもの、血糖値の上昇、肝臓におけるグリコーゲンやケトン体の生成を促進するものなど----

引用:大辞林 第三版/三省堂


5:2 免疫機能抑制【ストレス過剰の緊張状態】とは

 ストレスを脳が感じて、交感神経緊張状態が作られると、顆粒球が活性化され増加する。すると交感神経の刺激により、副腎髄質から、アドレナリン・ドーパミンなどのホルモンを分泌し、各臓器の運動刺激が行われる。また危急時には、防衛反応を担うアドレナリンの大量分泌を促し、血圧の上昇、糖の増加、気管支拡張、赤血球増加、胃腸機能の抑制。さらにコーチゾルの分泌により、リンパ球が溶解され免疫力の低下が引き起こされる。

  • 危急時の防衛反応
    • アドレナリン大量分泌血圧上昇、心拍数増加、糖の増加、気管支拡張、赤血球増加、胃腸機能(消化液、蠕動運動など)の抑制
    • コーチゾルの分泌 ⇒ リンパ球の溶解 ⇒ 免疫力低下で免疫障害が多発

交感神経緊張状態が継続されれば、顆粒球増多となり、大量に放出される活性酸素により組織障害を引き起こす。同時にリンパ球の減少で免疫障害、免疫異常が生じる。

引用:安保 徹(あぼ とおる) 著 / 免疫革命 / 講談社

生命危急時の防御反応【顆粒球 増多】

 顆粒球は、炎症性の防御系を構成し免疫の抑制を行う。では何の為に免疫力の低下を引き起こしてまで、リンパ球の溶解が必要なのであろうか。この場合の危急時とは、猛獣に襲われるような場面や、食が断たれ空腹が続く様な事態である。

  • アドレナリン大量分泌血圧上昇、心拍数増加、糖の増加、気管支拡張、 赤血球増加、胃腸機能(消化液、蠕動運動など)の抑制
  • 活性酸素を大量放出細菌、異常細胞の処理

 顆粒球の増加に伴ってリンパ球の減少が起こるのは、飢餓ストレスに対応する為に進化したと考えられるこのシステムによって、食が断たれるという生命の危機に際し、肉体は体を守る為に旺盛な生命力を発現しなければならない。その為には、アドレナリンの大量分泌顆粒球の増多を促すことで体内の炎症を鎮め、組織異常を修復する必要があり、非常事態に即応する仕組みによって、日常の生活でのストレスによる炎症が広がっていたり、臓器に異常があれば、この危急時の防御反応が働き、修復 再生が速やかに行われて、組織が強化される。

 つまり、日常の肉体が受けるストレスとは、精神的なものを除けば、食の間違いに起因するものが大半であり、今は多くの食材が肉体への負担を増す不自然食品と成り果て、組織異常が避けられない条件下で、慢性疾患の温床となっている。その為によほど食材を吟味し、選択しなければ、連続して襲ってくる不調から、病へと進み、食の改善をしない限り、後はお定まりの奈落に落ちる運命を辿るのみである。

 質の悪い食を常時摂りいれる事で、顆粒球増多が継続され炎症体質となり、日々不調に襲われる人生から逃れられなくなる。しかも過食傾向を制御できずに、飢餓ストレス時に最大化される炎症の修復 再生は機能する事なく、全身の臓器は代謝異常による、多臓器不全を起こし、手が付けられない状況に至る。一日断食や、十六時間断食がもてはやされるのは、空腹時にこそ全身の細胞の再生が活発になるからである。
 
 その名の通り生活習慣を改めるだけで、これらの問題は雲散霧消するのであるが、常識がそれを許さない。常識的に生きてお定まりの病身となるのか、健やかに生きるかの選択は、偶然などに頼るべきではない。正しい知識と、生命力溢れる食の選択によって、栄養不足は解消され、過食しなくとも、栄養は満ち足りてくる。この様に健全な心身は、意図的に創り上げる事が出来る事を學んで頂きたい。

 そして最新の科学は、数千年受け継がれてきた尊い伝統の知恵が正しい事を、最新の人を診る予防医学によって、それを証明しようとしている。しかしながら、日本の医療は半世紀足踏みをしており、欧米に大きく後れを取っている。人を診るのではなく、経済優先の医療に終始しているから、慢性病の蔓延を止められないし、その負担により庶民の生活は窮乏するばかりである。

5:3 免疫機能の異常亢進【ストレス除去ができない】

 本来、副交感神経優位の状態は、安静状態でリラックスする事により、心身の疲労を取り除き、睡眠中に様々な生体機能を正常に導く働きが促進される様な仕組みを持っている。しかし、この生体システムが現在の社会構造によって、その機能を果たす事が困難な危機 的状況に陥っている事を理解する者は少ない。

 つまり、この産業革命以来の数世紀、人類は 急激な社会構造の大変革によって、数百万年かけて構築してきた生体機能を無視した、新しい生活様式を取り入れて過ごしてきた結果、それによる運動不足、睡眠障害、栄養不足、精神障害など様々な想定外の事態に遭遇している。その過度なストレスによって人々は心身を病み、苦しみの渦中にある。

 その生活様式の変化の最たるものが食生活の変容ではないだろうか。手作業で火をおこして調理していた時代と現在では、雲泥の差がある事は明らかで、便利すぎる社会を実現した人類は、更なる自由と手間の開放を求めて、命と密接な関わりを持つ食行動をも他者にゆだね、素性の知れない加工食品や外食、工業製品である化学物質に汚染された、超加工食品さえも流通させてしまうに至っている。

 人様の作った手作りの「おにぎり」を食すことができない潔癖症の人がいると聞くが、この様な素性の知れない加工食品や、レストランが供する料理なら食べられるのであろうか。それとも、食材を厳しく吟味し、すべて自分で調理したものしか受け入れられ無いと言うのであれば、その潔癖性も理解できる。

 だが、そこまでの潔癖を求めるならば、食とは生命の質を決定し、人生を左右するパワーがある事を学び、時折不調に見舞われるような半端な健康ではなく、何事にも揺るぐ事のない「真の健康体」を目指してほしいものである。

 この国は、永い間「性善説」によって営まれた歴史を持つのだが、徐々ににその風習は失われてきている。外国人からすれば、まだまだ良い国と映るのかもしれないが、こんにちの社会は、政財官學の全ての分野で、庶民を騙し、その財産を奪い取ろうとするかの様な風潮が見受けられる。三河商人が提唱したとされる「三方良し」の思想が社会に浸透すれば、この上もない住みやすい社会が到来するのであろうが・・・。

食崩壊と慢性炎症【阿片窟と化した日本】

 炎症には「急性炎症」と「慢性炎症」があり、急性炎症は体を守り、修復するために必要な生体反応である。しかし、慢性炎症もその本質は同じなのだが、生活習慣の間違いにより、常に肉体がストレスに晒されている状態によって、慢性炎症体質となり、癌を筆頭に心臓病、脳卒中、認知症などの生活習慣病の主たる原因となっている。

 現在、行われているその治療は、化学、放射線、手術療法の何れかであるがそれは愚策中の愚策であると言わざるを得ない。それは患者の負担が大きすぎて、薬原病、医原病のリスクを増大するからに他ならない。根本療法での食習慣を改善する事でしか、心身の健康を回復し、その恩恵を享受する事はまず不可能である。

 慣れ親しんだ習慣を変える事は、それほど簡単では無く、色々と言い訳を作り出し悪習に固執し、それを継続してしまう。何故そういう事になるかと言えば、私達の社会から数千年、数万年受け継いできた、民族の叡智である「伝統文化」の喪失が大きな要因となって、特に戦後社会を蝕み、大きな影を落としている。

 間違った自由の解釈により、個人主義が極まったかに見える人心は、生き辛さが横行するストレス社会を生み出してしまった。どの時代であっても、その社会に馴染めない、社会不適合者が存在するのであろうが、現代にあっては、その数は約百五十万人。また自殺者が若者の死因第一になっている事は、社会の闇がどれ程に深いかを如実に表している。

 食の崩壊による栄養不足とストレス解消の為の食行動による、過食傾向が重なり、慢性炎症は非常に深刻な状況にある。慢性であるが故にその弊害に気付き難く、放置する事で病が進行して手遅れである場合も多く存在する。加工食品や白砂糖は勿論であるが、精製穀物の白米・白パンは慢性炎症を助長する不自然食品であり、生命力を奪い取るだけの欠陥食品である。
 
 この「命の食」が崩壊している事実を、政官財學のリーダー等は、無視・隠蔽する事で自らの既得権益を守り、戦後利得者への利益誘導に熱心である。その為に庶民の健康と財産が損なわれ、国益が散逸しているにも拘らず、意に介する事のない態度は、永い目で視れば天に唾する行為であるはずなのだが、目が眩んでいるとしか思えない。

 失われた伝統文化の一つに教育があるが、戦後のそれは、人間教育には適さない教育体制であり、言ってみれば思考力を育てない、従順な人間教育が行われている。故に「命の食」が崩壊している事にも気付く事なく、栄養素を喪失して、美味しさと利益のみを追求し、依存性を持つ砂糖やグルテンを使った商品の数々は、合法ドラッグと言っても過言ではない。これらの甘い食の罠に翻弄されて、穏やかに心身が蝕まれ、そのうちに身を亡ぼし兼ねない。その様子は、現代版のアヘン窟と化してしまっているのが、日本社会の真の姿であると言わざるを得ない。


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